2014年10月23日

肥料の基礎:菜種油粕

 油粕はアブラナなどの農作物から油を搾り取った粕である。原料として菜種、大豆、綿実、落花生、胡麻、米糠、ひまし油、コーン胚芽、カポックなどがある。

 菜種脂粕(窒素5%、リン2%、カリ1%)や大豆粕(窒素7%、りん1%、カリ1%)は窒素分を4〜7%含むため窒素肥料に用いられている。

 野菜の有機栽培で使用される菜種油粕について製造法や特徴、製造法、特性、使用法などについて記す。

1.菜種油粕の特徴
 菜種油粕(以下油粕と称す)の特徴を以下に列記する。
(1)遅効性有機質肥料として古くから使用され、有機肥料の中で最も生産量が多い。

(2)肥効は化学肥料より劣窒素の場合、化学肥料の60〜70%程度である。

(3)成分組成は窒素5%、リン2%、カリ1%でカルシウム、マグネシウムが少ない。

(4)施肥量が少なく発酵分解量も多いため、土壌に与える影響が少ない。

(5)土壌の物理性を改善し、土壌微生物を増やす働きが大きい。

(6)多量に施肥するとアンモニアや亜硝酸ガスが発生し、作物に被害を与える。

油粕は優れた有機質肥料であるが、その特徴や特性を理解して使いこなすことが必要となる。

2.菜種油粕の製造法
 油粕は菜種を熱して圧搾し菜種油を採った残り粕である。その製造法は
 @搾油機で圧搾し菜種油を採取後、溶剤(ノルマルヘキサン)で油を抽出し残渣を整粒する。
 
 ➁加熱、或いは非加熱菜種を搾油機で圧搾し菜種油を採取する。残渣を回収する。@の溶剤抽出法に比べ脂分が多い。

 @の溶剤抽出法が工業的に行われ市場に流通している。➁は日本の伝統的製造法であるが市場に流通している量は少ない。

3.菜種油粕の特性
 油粕の主な要特性について記す。
(1)成分組成
 代表的な菜種油粕の成分組成は窒素5%、リン2%、カリ1%でリン酸とカリ分が少ない肥料である。窒素形態は主にタンパク態であり、肥効も化学肥料より遅い。

 堆肥や発酵鶏糞などの有機肥料を使った有機栽培では、生育に必要な窒素供給量を得るために有機質肥料の施用量が過剰となる。

 その結果、塩基類やリン酸が土壌中に蓄積して養分バランスが悪化する。リン酸やカリ含有量の多い肥料と組合せて使うと、土壌中の養分バランスを適正に保つことができる。

(2)発酵分解速度
 油粕の窒素無機化は、全窒素の55〜70%である。有機肥料の窒素分解速度(無機化速度)は有機物のC/N比で決まり、C/N比が低い程分解速度は速くなる。

 代表的有機肥料の発酵分解速度は、魚粕>大豆粕>菜種油粕の順となる。菜種油粕のC/N比は5〜6、米糠油粕は14〜15であるため窒素無機化速度は菜種油粕が速い。

 油粕中の油脂含有量も窒素無機化速度に影響し、脱脂粕は無脱脂粕より窒素無機化速度が速くなる。その結果肥効も速い。

 また、土壌中における微生物の活性度は、低温より高温の方が旺盛となる。このため、窒素無機化速度は冬季より気温の高い夏季の方が速くなる。
 ・10〜25℃の無機化速度は温度の影響を強く受け、高温ほど速くなる。
 ・25〜30℃では温度の影響を余り受けない。

 地温30℃における油粕の窒素分解は5日までの間に急激に起こり、その後徐々に進み、40日位で最大となると言われている。

 油粕の肥効は遅効性なので、追肥ではなく元肥に利用される。

(3)作物障害
 油粕は、@施用直後に発芽阻害を起こす、➁多肥でアンモニアや亜硝酸ガスのガス害を引き起こす、B多肥にすると種バエなどの害虫を助長するなどが知られている。

 このため野菜に施肥する場合
 @種子や苗の根に直接接触しないように施肥する。

 ➁層状に施肥する場合は、間土や覆土をする。
などを行う必要がある。

4.菜種油粕の使用法
 油粕は元肥や追肥として畑に施す場合もあるが、肥料障害などを防ぐために「EMボカシ肥料」や「油粕液体肥料」に変換して施している。

(1)元肥
 生の油粕は生育期間の長い野菜に施している。ナス、ピーマン、キュウリ、唐辛子、トウモロコシ、キャベツ、ブロッコリー、シュンギク、玉ネギなどがある。

 元肥は落葉堆肥(グリーン堆肥)と一緒に施し、施肥後3〜4週間経過してから播種や定植をすることにしている。

 また、施肥量が多く作物障害が発生しそうな場合は、EMボカシ肥料を施している。


(2)追肥
 生育期間の長い葉物野菜の追肥に施している。ナスやピーマン、キャベツ、ブロッコリー、シュンギクなどに施している。

 油粕の肥効は遅効性なので、生育期間の短い野菜や即効性を必要とする場合は油粕を発酵したEMボカシ肥料や液体肥料を施す。

 施肥量が多い場合はEMボカシ肥料、少なくて済む場合は油粕液体肥料を3〜5倍に希釈して施している(平成26年10月23日作成)。

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2014年09月07日

肥料の基礎:発酵鶏糞

 鶏糞には乾燥鶏糞、発酵鶏糞、炭化鶏糞などさまざまな方法で処理されたものが市販されている。安価でリン酸、カリ、窒素が含まれている有機肥料である。

 土に混ぜてもガスを発することが少ない発酵鶏糞について特徴や施肥法、注意点などをまとめた。

1.発酵鶏糞の特徴
 発酵鶏糞は
 @安価である(15kg袋入り150円程度)
 ➁有機肥料の中では即効性有機肥料である。
 B比較的窒素分が少ない(1〜4%)。
 Cリン酸(4〜7%)、カリ(3〜4.5%)が多い。
 DC/N比が低い、10以下のものが大部分。
 ➅安全性が高い。
などの特徴がある。

 薬事法第83条の2に基づく省令第3条により、養鶏に抗生物質等の使用が規制されている。抗生物質等の薬物を使用しての鶏卵の出荷は法律違反となる。

 従って、国内の鶏糞は安全性が高いと考えている。我が菜園では安価な即効性有機肥料として有機栽培のメイン肥料として使用している。


2.製造法
 発酵鶏糞は生鶏糞(鶏の排泄物、水分25〜35%)を乾燥・発酵させた有機肥料である。水分を15〜17%程度に減少させ発酵を抑えている有機肥料とも言える。

 発酵鶏糞の製造法は、小規模な農家では「堆積・切返し」方式、大規模な事業所では「スクープ式」や「ロータリー式」の攪拌装置が用いられている。

 堆積期間、切り返し間隔及び攪拌頻度等は様々である。加水処理をする、混合物や発酵促進資材等を添加される場合もある。

 家庭菜園用にホームセンターで販売されている発酵鶏糞(粉状、粒状)は、大規模な事業所で製造されている。

 発酵鶏糞を保管している袋に雨水が入ると発酵が始まり異臭が発生する。水が浸入しないように注意する必要がある。


3.土づくり
 発酵鶏糞は、腐植の基となる炭素(C)の量が少なく、C/N比も10以下と低い。このため地中で容易に分解され易い特徴を持っている。

 しかし、腐植含量の増加や土壌の物理性の改善効果はあまり期待できない。このため、保肥力などを高めるためには堆肥と組み合わせて施肥する必要がある。


4.発酵鶏糞の肥効
 発酵鶏糞の分解(無機化)に及ぼす時間や温度の影響を示す。
(1)時間
 発酵鶏糞は施肥後4週間以上経過するとほとんど窒素が無機化しなくなる。播種や定植の1か月以上前に鶏糞を施用する場合は、窒素の肥効はあまり期待できない。

 また、鶏糞施用後1週間は窒素の取り込みが起こり、土壌中の窒素の状態が不安定となる。播種・定植まで1週間程度間隔をあけるか、施肥量を調整する必要がある。

(2)温度
 発酵鶏糞は、地温が低くなると窒素の無機化量が少なくなる。地温20℃で無機化する窒素の量は、30℃で無機化する量の80%程度に低下する。10℃では30℃の60%となる。

 10月になると平均地温が20℃以下になるので、鶏糞の窒素を活用するためには、9月中に播種または定植する必要がある。


5.野菜栽培における利用
 現在野菜などの作物栽培に発酵鶏糞を多用している。菜園で使用している発酵鶏糞の成分は、窒素4、リン酸3、カリ2と窒素の多い発酵鶏糞を施している。

(1)窒素肥料
 発酵鶏糞を元肥の代替肥料として利用する場合、基準窒素施用量の50%程度を代替
するように施肥している。残りの50%は油粕、EMボカシ、グリーン堆肥を利用。

 発酵鶏糞の窒素を元肥として利用する場合は、鶏糞中の窒素が無機化する期間が4週間程度と短いので追肥が必要となる。こまめな追肥をしている。

 窒素、リン酸、カリの他に、塩基アンバランス(pH)や微量ミネラルなどの欠乏症に留意する必要がある。微量ミネラルは草木灰やグリーン堆肥で補っている。

(2)リン酸
 発酵鶏糞からリン酸やカリなどの養分を利用する場合は、各作物の栽培基準に必要な養分を供給できるように鶏糞の施用量を計算して施肥する。
 
 リン酸や石灰の過剰供給にならないように注意する必要がある。


6.終わりに
 子どもの時の農家では10〜20羽程のニワトリを放し飼いで飼っていた。鶏が休む棚には鶏糞が溜まるので、かき取り庭で乾燥させていた。

 鶏糞から発する強烈な異臭に鼻を摘まんだものである。現在はこのような異臭を嗅ぐことも無い。今後も安価な大量生産の副産物を有効利用したいと考えている(平成26年9月7日作成)。

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2011年02月24日

肥料:苦土石灰


 2月も下旬、どの家庭菜園でも春の種播きをする準備が始まっている。先ず種播きをする畑に、苦土石灰を散布することから始める人が多い。

 苦土石灰散布の目的の一つに、土壌酸性度(pH)の中性があげられる。今回、苦土石灰とはどんなものかについて報告したい。


(1)苦土石灰とは

 苦土石灰の主成分は炭酸マグネシウム(Mg(CO3)2)と炭酸カルシウム(Ca(CO3)2)を含む無機化合物である。

 天然のドロマイト原石を乾燥、粗粉砕、微粉砕、分級して製造される。ドロマイト原石は国内では栃木県葛生や岐阜県美山などで産出される。

 栃木県葛産のドロマイトの化学組成は、酸化マグネシウム(MgO)として18.5重量%、酸化カルシウム(CaO)として33.8重量%である。


(2)苦土石灰は無機肥料

 
 苦土石灰は天然の無機肥料で有機肥料ではない。但し、農林水産省は日本農林規格(有機JAS)で有機農産物としての使用を認めている。

 「炭酸カルシウム、天然物質又は化学的処理を行っていない天然物質に由来するもの(苦土炭酸カルシウムを含む)」は使用出来ると告示している。

 粒状苦土石灰は、造粒剤としてリグニンなどが用いられている。菜園おじさんは、少しでも環境に優しい粉状品を使用している。


(3)苦土石灰の効能

 
 苦土石灰の主な効能は
 @ミネラル肥料(マグネシウム)

 ➁土壌酸性度の中和

の2つが挙げられる。

 肥料の3要素は窒素、リン酸、カリ。これに続く4要素が「カルシウム」、5要素が「マグネシウム」である。

 マグネシウムは植物体内に0.1〜0.7重量%存在し、葉緑素(クロロフィル:C55H72N4Mg)の主要構成成分となっている。

 葉緑素は光合成に関与し、生育中期から後期にかけてマグネシウムの消耗が激しくなる。

 マグネシウムが不足すると生理障害や病害、連作障害などの弊害が生じる。マグネシウムは植物体内で移動可能なため、欠乏症は下位葉から現れる。

 古い葉が黄化し生育が抑えられる。2番目の中和作用は、消石灰(水酸化カルシウム:Ca(OH)2)に比べ弱いのが特徴である。


(4)使用状況

 「有機・無農薬栽培」をスローガンにしているが、天然物や天然物を化学処理していないものを肥料として使用している。

 堆肥を大量に施肥し、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分を補給することは可能であるが堆肥製造設備も限られているため天然物を使用している。

 落葉堆肥(現物)を1平方メートル当たり年間1kg施しているので、ミネラル肥料は少なめにしている。

 @苦土石灰(通常の施肥量:50〜200g/1平方メートル当たり)
 マグネシウムの補給が中心。土壌の中和にも用いる。

 ➁消石灰(通常の施肥量:10〜200g/1平方メートル当たり)
 酸性を好まない土壌の中和。ジャガイモや落花生の葉面散布(芋の肌の改良やカルシウム分の補給)。

 B草木灰(通常の施肥量:50〜300g/1平方メートル当たり)
 微量ミネラル(カルシウム、マグネシウムなど)の補給やリン、カリ肥料として施す。防虫剤として葉面散布も行う(2011年2月24日)。

posted by 菜園おじさん at 17:19| Comment(0) | 肥料の基礎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする